ファンドレイザーの多くの方が知るドナーピラミッドという考えは、どの団体にも当てはめることができるフレームワークとして、非常に役に立つ内容です。
一方で、ドナーピラミッドの考えを知っているけど、なかなか実務に活かし切れない、落とし込めないと悩むファンドレイジングの担当者は多いはず。
ドナーピラミッドの考え方を紹介するだけでなく、どうやってNPOに取り込んで、実践していくのか?について、kintoneを活用した具体的な事例についてご紹介します。
ドナーピラミッドとは?
ドナーピラミッドとは、NPOのことを全く知らない潜在寄付者、既にNPOを知っているが寄付まで至っていない寄付見込者、少額寄付者、高額寄付者など、各属性の人たちを階層化して、効率的に寄付を集める手法を導き出すフレームワークのことを指します。
どの階層にどれくらい人数がいるのか、一定階層の人が一段階上の階層に行くためにどんな方法があるか?を整理して、体系的なファンドレイジング施策を実施する上で役立つもので、例えば、メルマガ登録者にNPO活動紹介のイベント案内を行い、イベントに参加してくれた人に寄付を依頼する、といった施策を行うための物差しになるのが、ドナーピラミッドになります。
一般的なマーケティング用語で、マーケティングファネルというものがありますが、その考え方とほぼ同じ考えで、マーケティングファネルとの違いは、上下の向きが異なるだけです。
ただし、このドナーピラミッドは、あくまで参考にしかならず、なかなか実務に落とし込みしきれない所がある、というのが、ファンドレイジング10年以上の経験者としての意見です。以下で、詳細根拠をご紹介します。
ドナーピラミッドを実践することの難しさ|単発寄付者に継続寄付をお願いする場合
単発寄付者に継続寄付のお願いをするシーンを考えてみると、ドナーピラミッドを実践することの難しさがよく分かります。
2つの観点で、ドナーピラミッドを実践することが難しい理由を以下、ご紹介します。
複数の単発寄付者情報が別々の管理画面に散っている
多くのNPOの場合、クレカで寄付を受け付けたり、クラファンや物品寄付で支援者を募ったり、様々な手段で寄付集めを実践されていることが多いです。
この場合、管理画面がそれぞれ別々になり、例えば、クレカで単発寄付してくれていて、かつ、クラファンでも支援してくれている支援者がいる場合、クレカ寄付者管理画面、クラファン支援者管理画面、2つに同一寄付者が重複していて、同一支援者に2回、継続寄付のお願いをする可能性がでてきてしまうことがあります。
そうすると、支援者が自分の支援した履歴をNPO側がちゃんとわかっていてくれないので、継続寄付はできない、と考えることも考えられます。
単発寄付者というカテゴリーで、重複せずに依頼を行うことが難しい、というのがドナーピラミッド実践の難しさでもあります。
属性ごとに分類分けができても一斉、個別に効率よく寄付依頼ができない
仮に、単発寄付者の中でも重複せずにリスト化ができていた場合であっても、リスト化するだけでなく、一斉に同じ寄付依頼のメッセージを届けるためには、メール配信サービスやLINEといった各ツールに、支援者の情報が格納されていて、一斉配信できる状況を実現しないと、効率よく寄付依頼をすることはできません。
例えば、多くのNPOが導入しているコングラントでは、2024年1月時点では、一斉にメールを送信する機能は実装されていないので、継続寄付のお願いを効率よく実践する手段を実現するのが難しいのが現状です。
以上のような観点から、ドナーピラミッドの概念が理解できても、実践、実運用をするためには、様々なハードルがあるため、多くのNPOで寄付集めに苦労しているという状況です。
コングラントとkintoneを併用する事で情報一元化と寄付依頼の同時実現が可能に
コングラント等のいわゆる寄付者向けCRMと、kintoneをうまく使い分けることで、バラバラになっていた支援者情報を一元管理し、適切なコミュニケーション(一斉配信で依頼したり、個別配信で依頼する)を選択しながら継続寄付への切り替え依頼を行うようなことが、実現できるようになります。
ドナーピラミッドの実践ができる、具体的な解決策について、以下みてきましょう。
コングラント等の寄付者CRMに全寄付情報をまとめる
最も重要なのが、複数の単発寄付者の情報を、どこか1箇所にまとめて管理し、単発寄付者のユニーク管理体制を実現することです。
単発寄付者の一覧がリスト化され、しかも、1人の単発寄付者がそのリストには重複して記載されていない状態にすること、これがドナーピラミッドで単発寄付者に寄付依頼を行うことを実践する上で、重要になってきます。
上記を実現するためには、例えば、コングラントのようなクレジットカードでの寄付受付や寄付してくれた場合に管理画面に人の情報や決済の情報が溜まっていくサービスを軸にして、あらゆる種類の単発寄付情報等を、すべてコングラントに集約することが肝要です。
コングラントをどうファンドレイジングに生かせばよいかについては、こちらの動画をご参考ください。
寄付者情報をkintoneに移してメールワイズ等で配信する
上記を実現して、単発寄付者がユニーク化されたリストがあれば、あとは、そのリストをどこかにインポートをして、一斉に寄付依頼を行うことで、単発寄付者に対して継続寄付のお願いを効率的に実現することができます。
たとえば、ベンチマーク等のメール配信サービスを活用するなどが、おすすめです。(NPOは25%の割引あり)
ただ、ベンチマーク等を活用した場合、単発寄付者に寄付依頼を行うという機能は、実装できますが、誰にどんなメールを送ったかという履歴を残す、という点が叶えにくい場合があります。
例えば、1人の寄付者の決済履歴、ボランティア参加履歴、やりとりの履歴(今回のメールでの寄付依頼のこと)といった、複数の履歴を1箇所にまとめたい、となった場合には、ベンチマークでは実現が難しいです。
そのため、kintoneで寄付者、支援者の情報を一元管理し、kintoneでリスト化した人に対して、一斉にメール配信ができる、メールワイズ等を活用することで、寄付依頼と履歴を残す、この2つを実現することが可能になります。
kintoneで寄付者だけでなく全ステークホルダーを管理できる体制が実現できる
kintoneに、寄付者、受益者、ボランティア、セミナーの参加者等、あらゆる情報を溜めていくことを実現すれば、全てのステークホルダーが、どれくらいNPOの活動に共感し、参画してくれているのか?その参画度合いを可視化することが可能になります。
少し手間が発生してしまうのは事実ですが、ひと手間かけることで、初めて、ドナーピラミッドの概念を適切に実践することができたり、支援者と適切なコミュニケーションがとれたり、1人の支援者とのやりとりの全履歴を1箇所に集約して、スタッフの入れ替えがあった場合でも、引き継ぎがスムーズになったりする等、様々なメリットが享受できるようになります。
ほんの少しの手間をかけてファンドレイジングの質を高めよう
今回は、ドナーピラミッドを実務に落とし込むことの難しさと、kintoneでの解決方法について、ご紹介させていただきました。
いずれにしても、寄付依頼を行うことだけがゴールではなく、支援者のことをNPOスタッフ全員が理解できる状況を担保するということをゴールに設定して、ファンドレイジングを現場に落とし込んでいくプロセスが、NPOには求められます。
NPO経営やファンドレイジング、DXの全体像を把握しながら、最適解についてのアドバイスやkintoneの具体的な構築方法について知りたいNPOの代表や事務局長、ファンドレイザーは、ぜひ、奏ワークスへのご相談をお願いします。
ありがとうございました!
それでは、今日もよい一日を。