時間がない。人手が足りない。NPOを運営するのにこんな悩みを抱えている人は多いはず。
その悩みを解決してくれるITツールとしてCRMという言葉を聞かれた方はいらっしゃると思いますが、CRMとはどんなツールで、どう実務に役立つのか?分かりませんよね。
私自身、NPOキャリア10年以上、複数NPOのコンサルを行う経験でようやくCRMについて理解できつつあるので、ノウハウをみなさんに紹介させていただきます。
CRMとは?顧客管理システムの略称である
CRMとは、カスタマーリレーションマネジメントの略称で、日本語にすると顧客管理システムになります。
NPOでは、カスタマーの代わりにドナー(寄付者)が使われ、DRMと呼ばれることもあります。
CRMを実務に活かすのは、以下のスライドを見てもらえたら分かりやすいかと思います。
CRMに、顧客とのやりとり、イベント参加履歴、寄付履歴がまとまって入れば、組織で誰が対応しても、顧客の事が理解でき、顧客の過去の履歴に基づいたコミュニケーションを行うことができます。
こういったやりとりを行うためにCRMが必要になるとイメージして下さい。
なぜNPOにとって必要?CRM活用3大メリット
CRMはNPOの経営の根幹を支えてくれる仕組みで、様々なメリットを享受することができます。以下、詳しくメリットをみていきましょう。
既存寄付者に感謝・報告・お礼を徹底することで寄付の増額につながる
CRMは、既存寄付者に対して、感謝・報告・お礼を行う上で、コストを抑えた運用ができるので、結果的にNPOが最も生産性高く寄付の増額につながる仕組みが実装できるツールになります。
寄付に限らず様々なサービスに共通するルールとして、5:1の法則というのをご存知でしょうか?
新規顧客獲得に係るコスト:既存顧客からリピートで売上が上がるコスト=5:1
この法則を根拠に、新規に対して寄付お願いしますと働きかえるより、まず優先して、既存顧客を大切にする仕組みを作る方が、効率的に寄付増額が図れる確率が高くなります。
その仕組みを実装するのに、CRMが役立ちます。
1つのアクションで2つ以上のアクションを実行できるため法人全体の生産性を高める事ができる
人が手を動かし1つのアクションを実行する場合、CRMを活用すれば同時に2アクション以上を実行してくれるようになるため、法人全体の生産性を高めることができるようになります。
詳細は、キントーンとエクセルの違いについてまとめたブログに記載があるのでご参考ください。
属人化を防いでNPOの活動を次世代に引き継げる
多くのNPOにとって人が入れ替わる際の引き継ぎなどが悩みの種になる場合がありますが、CRMを活用すれば、属人化を防いでスムーズな引き継ぎが可能になります。
NPOは限られた人員で運営する場合が多いですが、主力となっている人が辞めてしまい、その人がやっていた業務が分からない。そんなふうに困ることは、よくあることで、NPOだけでなく様々な法人で起こり得るシーンかと思います。
普段からCRMを正しく整備し、運用ができていれば、業務を人に属すのではなく、仕組みに属した運用ができるようになるため、急な人の入れ替わりが発生しても負担を最小限に抑えて、業務を推進する体制の構築が可能になります。
NPOが利用する主なCRM
NPOが利用するCRMの全体像をまとめてみます。
まずはこちらの図を基準に、どんなCRMがあるのかを参考にしていただければと思います。
なお、今回のCRMは寄付者管理をテーマに図を作成していますが、寄付者ではなく受益者、運営者(=従業員)に対しても、CRMを運用していくことは可能です。
カート〜顧客管理までを担うCRM
主なCRMには、以下のようなものが挙げられます。
- コングラント
- シンカブル
- ロボットペイメント
これらのサービスで完全競合にあたるのが、コングラントとシンカブルで、ロボットペイメントは、一般的なCRMとは異なり、決済カート機能と、決済した顧客の情報を一覧化する機能、課金日にメールを送信する機能等が備わったサービスになります。
ロボットペイメントの機能に加えて、コングラントとシンカブルは、以下のような機能が追加されたサービスになります。
- 寄付募集を行うための募集ページを作成する
- 領収書を発行する
- 自動返信メール以外のメールを送信する
- 寄付と会費、異なる決済内容も取り扱う
コングラントやシンカブルは、寄付者管理を行う上での上流〜下流までをパッケージで利用できるCRMという形で考えていただければと思います。
顧客管理からメール送信までを担うCRM
上記とは別カテゴリーのCRMとして、セールスフォースやキントーン、ZOHO CRMやHubSpotなどが挙げられます。
これらは基本的に同じサービスになり、完全競合にあたるCRMになりますが、NPOで特に導入が進んでいるのは、セールスフォースとキントーンの2サービスになり、両者の違いは、別途別のブログでご紹介できればと思います。
なお、セールスフォースやキントーンと、コングラント等の違いとしては、以下のような点が挙げられます。
- 対象者をリスト化して一斉にメール送信を行う機能がある(キントーンは、メールワイズとセット導入が必要)
- ログインユーザーによって閲覧する情報を制限するなどのカスタマイズが可能になる
- 情報が変更されたら、他のユーザーにも通知が飛ぶ、ある情報が作成されてから一定期間後にリマインダー通知が飛ぶなどの通知機能が活用できる
等です。文字情報だけを見るだけでは分かりにくいですが、
寄付者管理に特化した管理体制を構築する場合は、コングラントやシンカブルを活用する
寄付者以外のボランティアや自主事業利用者に対する管理等を行う場合は、セールスフォースやキントーンを主に活用する
そういった形で用途を分けて、自団体で役割を分担した上で、これらのサービスを検討してもらえたらと思います。
CRMの構築は外部のパートナーに依頼するのがおすすめ
CRMはNPO経営の根幹となる、土台サービスになるため、どんなCRMが適切でどのように活用するのか?は、体系的なノウハウや、マイクロ法人の経営に活かす視点がある人が関与した上で導入を進めるのがおすすめです。
- プロボノに依頼する
- コンサルに依頼する
なるべく早い段階で、外部パートナーに頼って、構築を進めていくことをおすすめします。
法人規模に関わらず、助けて欲しい、こんなスキルを持っている人を歓迎します、ということをセットで呼びかけると、NPOの事業内容によっては、プロボノ等で手伝ってくれる人が出てくる場合があります。
もし、関わってもらうパートナーに適切な報酬を払える財源がなくとも、助成金等を活用して財源を確保することは、十分可能だと思います。
NPOでのCRM活用事例が十分でない主な原因は、経営者や事務局長がその必要性、重要性、活用イメージを理解できていないからだと考えれらます。
CRMの活かし方を理解し、活動を推進してもらえたら幸いです。
最後に、CRMについての動画について詳細を知りたい方は、以下の動画をご参考ください。
それでは今日もよい一日を。
ありがとうございました!